
私の長男は、高校を出た後、 ろくに働きもせず、
いつも金の無心をしたり借金したりで、
家の権利証を勝手に持ち出して金を借りたこともありました。
その借金は返しましたが、こんな奴には一切相続させたくありません。
こう対処せよ
長男を、生前にまたは遺言により、
推定相続人から廃除する。
解説 ~子どもに一切相続させないことができるか?~
民法上、
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者のこと)が、
被相続人に対して虐待をし、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき、
または推定相続人にその他の著しい非行があったときは、
被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求できると規定されています。
よく遺言に、「長男○○には一切財産をやらない」といった内容の条項を書いてあるのを見かけますが、
たとえ被相続人がそのように書いたとしても、
「長男○○」には遺留分があるため、
実際には、「長男○○」が遺留分を請求してきた場合には、
その分だけは財産が移ってしまいます。
「廃除」とは、遺留分請求権を含んだ一切の相続権を推定相続人から剥奪する手続です。
ビタ一文も渡したくないときには、廃除で対処することになります。
しかし、ただ気に入らないから廃除できるわけではなく、
「推定相続人の虐待、侮辱その他の著しい非行行為が客観的に重大なものであること」
が必要とされています。
さらに、
「推定相続人がそのような行動をとった背景の事情や被相続人の態度及び行動も斟酌考量」すると
されていて、
「推定相続人がそのような行為をしたことにそれなりの理由がある場合」、
「推定相続人がそのような行為をするに至った原因として
被相続人にもそれなりに責任がある場合」には、
廃除が認められなくなります。
事例における長男は、
特に、家の権利証を勝手に持ち出して借金をした点がかなり悪質で、
「著しい非行行為」に該当する可能性は高いと思われます。
円満な解決を図る場合は、
まず、いきなり廃除を請求するのではなく、
長男に対して「遺留分の放棄」をするように話をしてみましょう。
次に、長男がその条件を飲めないという場合は、廃除を請求することになります。
廃除の手続きについて
廃除の手続きは、
生前に被相続人が自ら家庭裁判所に廃除を請求して行うやり方もありますが、
遺言に廃除する旨を記しておき、
死後に遺言執行者が家庭裁判所に請求するやり方もあります。
ただし、遺言執行者が廃除原因を証明するのは難しい場合が多いため、
本当に廃除したいなら生前に自ら行うべきです。